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昨年7月に開催が発表されてからずっと心待ちにしていた、マティス、モネ、ルノアール、ゴーギャン、ゴッホ、ピカソなどが一同に会する「プーシキン美術館展」(上野の東京都美術館で12月18日まで開催)に行ってきました。
この展覧会は、印象派からフォービズム・キュビズムまでの各時代を代表する画家たちの名画を、時系列に展示しています。絵画の発展の流れを理解しやすい展示方法でしたので、フランス近代絵画にそれほど詳しくない方でも十分楽しめると思います。
19世紀末から1920年代にかけて、アメリカのバーンズ、イギリスのコートールド、そしてロシアのシチューキンとモロゾフと、フランスの近代絵画の大コレクションが、フランス以外の国の個人実業家の手で形成されました。その中でシチューキンとモロゾフのコレクションの特徴は、19世紀末から第一次大戦前までという、他よりも比較的早い時期に精力的に作品を収集した点にあります。
1900年代初頭は、印象派がようやく認められゴーギャンやセザンヌが評価され始めた時期で、フォーヴィズムやキュビズムはまだ前衛的な存在だったそう(マティスが「野獣」の仲間と嘲笑され、ピカソが友人達から悪口を言われていたような時期でした)。そんな時期に、マティスの「金魚」や、ピカソの“青の時代”を予感させ、黒の輪郭線にはゴーギャンの影響を感じさせる「アルルカンと女友達」のような歴史的名作を手に入れた炯眼には感服させられますね。
シチューキンは、感受性を信じ、表現性の強い、実験的・前衛的な作品を集めました(モネやルノワールなど印象派の作品収集から、ゴーギャンやセザンヌなど後期印象派に移り、最後にマティスとピカソにたどり着きました)。対してモロゾフは画商の意見をよく聞きいれ、評価に値する名作を体系的に揃えました(ルノワール、モネなどの印象派から、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、ボナール、さらにマティス、ピカソまでを購入し、特にセザンヌとボナールを好んだそう)。彼らの好みや考え方は違っていましたが、絵画に対する鑑識眼においては共通していました。
2人は17年のロシア革命ですべての財産を没収され、亡命を余儀なくされました。20年代、財政難だった旧ソビエト政府がコレクションを売却しようとしたときに、シチューキンは、「自分はロシア国家と国民のために絵を集めたのだから、売るのは反対だ」と抗議したと伝えられています。コレクションが散逸を免れ、エルミタージュとプーシキンの両美術館に受け継がれたのは、シチューキンとモロゾフの絵画に対する情熱のお陰かもしれませんね。
今回の一番のお目当ては、私の大好きなマティスのシリーズの中でも傑作といわれている「金魚」です。マティスは旅行先のモロッコでガラス鉢の金魚を眺める現地の人たちに刺激を受け、1912年春から夏にかけて金魚鉢を描いた4点の生物画を製作しました。プーシキン美術館の「金魚」はその最高傑作とされています。この絵はシチューキンが1912年にパリ郊外のマティスのアトリエで一目見て気に入り、その場で購入したそうです。
水面の金魚には赤い影があって立体感が出ているのに対し、周囲のテーブルや椅子などの人工物は平面的に書かれているため、また回りの植物のグリーンと赤い金魚のコントラストで金魚が生き生きしていて、ずっと見ていたいと思わせる絵でした。
もちろん「金魚」以外の絵画も傑作揃いです。日本初公開の作品が多いこともあるのでしょうが、フランス近代絵画は比較的沢山観ているつもりでしたが、新鮮で楽しめる展覧会でした。
シスレーの「オシュデの庭、モンジュロン」は、シスレーのお得意の光と風に溢れた空(彼は空を背景とは思っていず、いつも空から描いていた様ですよ)、自然の生命力を感じられて、見ていて爽やかな気持ちになりました。
ピサロは今まで私はそれほど好きではなかったのですが、今回展示されていた「オペラ大通り、雪の効果、朝」は雪が降る冬の光景なのに不思議と温かさを感じられる作品で、はじめてピサロが好きになりました(雪景色は見たことはありましたが、パリの街の雪景色の作品は初めて見たので新鮮でした)。
もちろんピカソ20歳の青の時代を予感させる作品「アルルカンと女友達」も外せません。当時まだ画家として認められていなかったピカソは、アルルカンや旅芸人などの社会から疎外されているような人たちに自分を投影していたそうです。女友達の鬱屈した表情、アルルカンの気のそぞろな表情、色彩、手の造形のコントラストの緊張感があって、19世紀末のパリの雰囲気を醸し出している素晴らしい作品です。
他に絵の中に入ってしまいたくなる様な夕暮れ時に街灯がつき始めたパリの雰囲気がよく出ているラファエリの「サン=ミッシェル大通り」、構図が面白いタウローの「パリのマドレーヌ大通り」も好きな絵でした。
皆さんも是非、シチューキンとモロゾフの審美眼と情熱を堪能してみて下さい!
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