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上野の国立西洋美術館で開催されている「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール - 光と闇の世界」展へ行ってきました。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは17世紀のフランス東部ロレーヌの画家で、現存する真作と認められている作品はわずか40点ほど(フェルメールよりやや多いですね)。250年もの間、歴史の中に埋もれていましたが、1915年にドイツの美術史家が歴史の闇の中からよみがえらせ、1997年のパリでの大回顧展では53万人がつめかけ個展の入場者の記録をぬりかえたそうです。いまやフランスの国宝、フランスのファルメールと呼ばれるほどの評価を受けていますが、日本では一般的に知られていません。同時代のレンブラントやベラスケスのように知名度が高くないのは、残された作品が極めて少ないことと、その生涯が不明の点が多いため、人目をひくエピソードが少ないことが原因なのでしょう。
彼の絵画の特徴は、この展覧会のタイトルにもなっている、光と闇のコントラスト。特に、蝋燭などの光によって暗闇から浮き上がる人物の表情が暗闇との絶妙の対比を見せる彼の画風は、「夜の情景」と呼ばれており、カラバッジョの影響を強く受けているものです。
ただ、卓越した写実、明暗の表現力は同じですが、カラバッジョの絵画が力強くダイナミックなものに対して、ラ・トゥールのそれは、簡潔かつ緻密な構図が織り成す、永遠の静寂を感じられる絵画です。今回は模作も多く展示されていますが、どんなに技術的に似せてもラ・トゥールの精神性までは表現できないのだと、真作と模作を比較してみると、強く感じます。
どの絵も忘れがたい印象を残しますが、私が特に引き込まれたのは以下の3枚でした。
1枚目は、今回の展覧会の目玉"ダイヤのエースを持ついかさま師“(ルーブル美術館蔵)。この4人(中央の女主人、カモにされるお金持ちの息子、不正を見てみぬふりをするメイド、いかさま師)の性格描写の的確さ、服の質感の表現の巧みさが際立っています。宗教的な作品で有名なラ・トゥールが、この絵では静寂さの中に今にも動き出しそうな危ういドラマを表現しており、異彩を放つ作品です。
2枚目は"書物のあるマグダラのマリア“(ヒューストン、個人蔵)。マグダラのマリアはもともと娼婦で、イエスと出会って改心し、キリスト没後は、サント・ボームの洞窟で瞑想生活をおくり生涯を閉じたと伝えられています。顔をほとんど髪で覆っている横顔のマグダラのマリアがテーブルの上に置かれた頭蓋骨と対峙する姿が描かれているのですが、ティツィアーノやカラバッジョをはじめ、マグダラのマリアは例外なく美しさと信仰心を兼ね備えた聖女として描かれていますので、彼女の美しい容姿を描いていないというだけでかなり異色の絵です。だからこそ、彼女の改心と救済を、観る人に静かに語りかけてくるのかもしれませんね。
3枚目は"ランタンのある聖セバスティアヌス″。ラ・トゥールはルイ13世付の画家でしたが、この絵を見たルイ13世が、今まで彼の部屋に飾ってあった絵を全て取り外させ、この絵だけを掛けさせるほど、お気に入りの作品だったそうです。残念ながらこの真作は現存しておらず、今回の展示は2作とも模作でした。
全体的に、ずっと対話していたいという気持ちになるような、その場を立ち去りがたい絵が多く、久しぶりに絵の前で見入ってしまったほどでした。細部において徹底的に写実的でありながら、現実をわすれてしまうような静謐な世界へ導いてくれます。このような体験こそ絵画鑑賞の素晴らしさですね。
今回のように、現存するラ・トゥールの描いた絵画の半数に加え、ラ・トゥール自身やアトリエなどによる模作・関連作を含めた絵画30点余りを一度に見られる奇跡的な展覧会は、日本では最初で最後だと言われています。ぜひこの光と闇の織り成す静謐で詩的な世界に触れてみてください。
現在、ラ・トゥール展の他にも、ゴッホ展、ルーブル美術館展などが開催されています。このゴールデンウィーク、絵画の世界に浸ってみるのもいいかもしれませんね!
展覧会の詳細はこちらから。
ただ、卓越した写実、明暗の表現力は同じですが、カラバッジョの絵画が力強くダイナミックなものに対して、ラ・トゥールのそれは、簡潔かつ緻密な構図が織り成す、永遠の静寂を感じられる絵画です。今回は模作も多く展示されていますが、どんなに技術的に似せてもラ・トゥールの精神性までは表現できないのだと、真作と模作を比較してみると、強く感じます。
どの絵も忘れがたい印象を残しますが、私が特に引き込まれたのは以下の3枚でした。
1枚目は、今回の展覧会の目玉"ダイヤのエースを持ついかさま師“(ルーブル美術館蔵)。この4人(中央の女主人、カモにされるお金持ちの息子、不正を見てみぬふりをするメイド、いかさま師)の性格描写の的確さ、服の質感の表現の巧みさが際立っています。宗教的な作品で有名なラ・トゥールが、この絵では静寂さの中に今にも動き出しそうな危ういドラマを表現しており、異彩を放つ作品です。
2枚目は"書物のあるマグダラのマリア“(ヒューストン、個人蔵)。マグダラのマリアはもともと娼婦で、イエスと出会って改心し、キリスト没後は、サント・ボームの洞窟で瞑想生活をおくり生涯を閉じたと伝えられています。顔をほとんど髪で覆っている横顔のマグダラのマリアがテーブルの上に置かれた頭蓋骨と対峙する姿が描かれているのですが、ティツィアーノやカラバッジョをはじめ、マグダラのマリアは例外なく美しさと信仰心を兼ね備えた聖女として描かれていますので、彼女の美しい容姿を描いていないというだけでかなり異色の絵です。だからこそ、彼女の改心と救済を、観る人に静かに語りかけてくるのかもしれませんね。
3枚目は"ランタンのある聖セバスティアヌス″。ラ・トゥールはルイ13世付の画家でしたが、この絵を見たルイ13世が、今まで彼の部屋に飾ってあった絵を全て取り外させ、この絵だけを掛けさせるほど、お気に入りの作品だったそうです。残念ながらこの真作は現存しておらず、今回の展示は2作とも模作でした。
全体的に、ずっと対話していたいという気持ちになるような、その場を立ち去りがたい絵が多く、久しぶりに絵の前で見入ってしまったほどでした。細部において徹底的に写実的でありながら、現実をわすれてしまうような静謐な世界へ導いてくれます。このような体験こそ絵画鑑賞の素晴らしさですね。
今回のように、現存するラ・トゥールの描いた絵画の半数に加え、ラ・トゥール自身やアトリエなどによる模作・関連作を含めた絵画30点余りを一度に見られる奇跡的な展覧会は、日本では最初で最後だと言われています。ぜひこの光と闇の織り成す静謐で詩的な世界に触れてみてください。
現在、ラ・トゥール展の他にも、ゴッホ展、ルーブル美術館展などが開催されています。このゴールデンウィーク、絵画の世界に浸ってみるのもいいかもしれませんね!
展覧会の詳細はこちらから。